UCHEW-NISSHI

Tokyo Based DJ KNK's Blog - 音楽関連、東京近辺のパーティ情報、各地の旅先での音楽に関連した散策、読んだ本や見た映画について

クライモリ;Wrong Turn

クライモリ:デッド・リターン、リリース記念!ということで今までのクライモリシリーズを全部見直してみました。名作『サランドラ(Hills Have Eyes)』の森版ともいえる作品(実際1作目では何気なく『サランドラ見た?』っていうセリフが!こういうの大好き)。やっぱり一番おもしろいのは1作目で、今でもわくわくしながら見られる。

・クライモリ(Wrong Turn)

1作目は、マスターズ・オブ・ホラーにも出品をしているRob Schmidt監督(http://www.robschmidt.com/)作品。随所にホラー愛が溢れ、それを逆手にとったかのような演出で観客をはらはらさせる序盤が特に好き。大好き。冒頭のテキサス・チェーンソーを思わせる数々の新聞記事。13日の金曜日から続く伝統的な『案内人』の存在。不慮の事故により取り残される主人公達。軒先にフライパンがぶら下がった家。どれもどこかで見たことあるシーンで思わずニヤニヤしてしまうものばかり。一方で、そうやってニヤニヤしている観客をあざ笑うような演出。交互に切り替わる場面が緊張感を高める中、最初の犠牲者はホラーのセオリーに沿っているのか?裏をかいてくるのか?はたまた同時多発的にやってくるのか?と見ているものを退屈させない。家の中のシーンは本当に恐かったし、アクションシーンもはらはらしっぱなし。こういう正統派ホラーがやっぱり一番好きなんです。

・クライモリ デッド・エンド(Wrong Turn2 Dead End)

倒したはずのやつらが起き上がる!というホラー定番の終わり方をしたラスト。しかし2ではそれを採用せず、全く新しい舞台で弓矢を用いる食人族、森、そしてY字路というモチーフのみを継承している(但し、食人族の出自としての薬物汚染や近親相姦といった設定は、1よりあからさまな形で示される)。その結果、1との連続性は消失、ストーリーとしての厚みは否応なく失われている。さらには、予算のカットにより森のシーンは(クライマックスではそれを手放さざるを得なくなるほどに)安っぽくなり、B級色は格段に高くなっている。一方で、作り手のホラー愛が伝わってくる演出は相変わらず。悪魔のいけにえそのままの食卓シーンや、廉価版シュワルツネッガーが攻守を交代させるプレデター的展開等、にやりとさせるシーンがいくつも出てくる。また、リアリティ番組という設定から主人公をどんどん交代させていく脚本も秀逸だと思う。(ただこれに関しては序盤にもっと語りがほしかったように思う)。シリーズ的には2から未公開になってしまい、扱いもかなり低いものとはなっているが、少なくとも90分という時間を投資するだけのエンターテイメント作品ではあると思う。

・設定等以外にも、序盤で少女が殺人鬼に"Don't Die"と叫び続ける皮肉や、途中の近親相姦・出産といった目を背けたくなるようなシーン、そしてその目を背けたくなっている自分を自覚させる演出が非常にホラー映画的。また、シュワルツネッガー廉価版だけで終わっていたらただの軍隊礼賛映画になってしまっていたようにも思えるが、序盤の安っぽいリアリティ番組のカット等も含めてナショナリズムや世情に対する批判的な態度において非常に意識的な映画だと思う。そういう部分に象徴される作り手の丁寧さだったり良心的な部分だったりがただのB級ホラー映画に終わらない魅力を作り出しているのだと思う。

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・クライモリ デッド・リターン(Wrong Turn 3 Left For Dead)

そして、(中途半端な邦題の作品は無視して)いよいよ第3弾がリリース!今回も2と同じく未公開でのパッケージ化。しかし、1のスタッフが再集結ということで非常に期待がもてる。ホラー映画愛にあふれる作品、というシリーズの特徴を殺していない作品であることを祈って、5月の発売を待つばかり!