UCHEW-NISSHI

Tokyo Based DJ KNK's Blog - 音楽関連、東京近辺のパーティ情報、各地の旅先での音楽に関連した散策、読んだ本や見た映画について

鉄男 The Iron Man 再見 ――鉄男3 The Bullet Man 公開記念

ということで、鉄男を再見。これ、初めて見たのは多分高校生くらいのころで、マリリン・マンソンだったりナイン・インチ・ネイルズだったりっていうバンドに傾倒しながらインダストリアルっていう音楽に興味を持ったのがきっかけだった。背伸びしている高校生に作品の良し悪しがわかるはずもなく、ただただ石川忠の繰り出すインダストリアル・サウンドに圧倒されていた覚えがある。それから気づけば何年もの月日が経過しているわけで、今改めて見ることでそこに新しい何かを発見できるのではないか、ということを期待する。


・鉄男 The Iron Man



改めて見て、鉄男とはなんであるかということにやっと気づいた。それは、我々の心だ。
我々は皆、柔らかで暖かな心を持って生まれてくる。しかし、欲や恐怖、そしてそれによって引き起こされる様々な出来事によって冷たく硬い鉄へと変化していってしまう。その冷たさ・硬さはしばしば自分や他人を傷つけ、それにより我々の心は鉄へと向かう。我々はそれを恐れる。だからひたすら"やつ"から逃げようとする。やつは我々を脅し、恐怖せしめ、殴り、跳ね飛ばす。我々はそれに必死で抵抗する。恐れ、慄きながらも必死で、逃走する。"やつ"とは、広義の社会だ。世間だ。全力で我々を大人へと追いやる、世界の全てだ。やつのせいで、我々はどんどん鉄になっていく。
まず、外面としての身体が鉄になり、何も感じることができなくなる。感覚が死に絶え、動くことがひどくおっくうになる。そして、身体が十分におぞましいものになると、今度は内部が鉄と化していく。考えることができなくなり、機械的な反射を繰り返すのみとなってしまう。そうなった主人公のサラリーマンを突き動かしていたのは、ただ一つ、意志だけだ。身体が動かず、思考が停止したとしても、意志のみはその形のまま存在し続ける。それは、文字通り考えが硬くなることを意味するかもしれない。しかし、その硬さでもって抵抗を続けない限り、そこに待つのは奴との同化だ。やつと同化した先に待つのは、虚ろな目で『いい気持ちだ〜』といいながら、訳もわからず"やつ"とともに新たな犠牲者を探しに出る哀れな姿だ。抵抗には絶叫したくなる恐怖と激しい苦痛が伴う。それに耐えるか、同化して全てを止めるか。鉄の侵食を実感する中で、迷っている暇はない。


・公開記念ってことでDVDが角川映画から再発されている。
・2も見なきゃ!
・鉄男3は5月公開(http://tetsuo-project.jp/
・主演の田口トモロヲプロジェクトXのナレーターと同一人物だっていうことはAERA読むまで知らなかった。すごい表情をする俳優だなっていう記憶しかないけど、たしかAERAでの紹介は、『微妙な違和感を持つ声』だった気がする。