UCHEW-NISSHI

Tokyo Based DJ KNK's Blog - 音楽関連、東京近辺のパーティ情報、各地の旅先での音楽に関連した散策、読んだ本や見た映画について

ボルトはなぜ速いのか?−−WHY DO JAMAICANS RUN FAST?

北京オリンピック陸上競技で6個の金メダルを獲得したジャマイカ。脅威の世界新をマークしたウサイン・ボルトをはじめとした選手達をそこまで走りに駆り立てるものはいったいなんなのか、そしてその速さの秘密とは?

一見すると陸上競技の教則ビデオのようにも思えるタイトルだが、内容はどちらかというと文化人類学的なもの。陸上競技を軸にジャマイカの人々の日常/スポーツへの思い/音楽とのかかわり等を丹念に描いていて、とても興味深かった。全編を通じてバックで流れている音楽も最高で、そのひとつひとつの曲名等を記載してくれている思いやりも◎。
個人的には全編に溢れる愛国心がとても印象的で、それは自分の嫌いなナショナリズム的なものとは根本的に異なったポジティブでコミュニティ愛に近い愛国心だったように思う。また、金メダル翌日の協会での説法?ゴスペル?のシーンや、流行りのダンスを踊る子ども達の映像等、音楽がいかに生活に近いのかを実感できるシーンも数多く収録されている。

ダンスホールのDJ達とのリスペクトの送りあいとか、地域あげての応援とか、金メダルに国中が熱狂している様子とか、とにかくジャマイカという「コミュニティ」の在り方が印象的。それは歴史の業なのかもしれないし、国土の小ささなのかもしれない。もちろん限りある画面に映し出されているのは切り取られた風景なので、ちらりと登場するゲットーのギャング達とその他の住人達との間には大きな溝があるのだろうと思う。だけど、みんながスポーツに対して純粋に喜びを爆発させている風景はとても心温まるものだった。

・コーチはボルトの“ダンス”(パーティー)通いに少し困ってはいるようだったが、やっぱり街中の人たちと夜中に踊り狂っている映像は圧巻だった。飛行場に帰ってきたボルトの格好ももろ“B-BOY”。世界記録っていう越えられない壁を考慮しても、日本人だったらきっとあそこまでの国民的英雄にはなれないんじゃないかなと思う。

・ボルト以外にも何人もヒーローが登場する。みんなそれぞれかっこよくて、涙が出そうになる場面も何個もあった。とにかくいい映画です!