UCHEW-NISSHI

Tokyo Based DJ KNK's Blog - 音楽関連、東京近辺のパーティ情報、各地の旅先での音楽に関連した散策、読んだ本や見た映画について

増田宗昭『知的資本論』を読んで

CCC社長増田宗昭氏。彼の「企画」や「編集」に対する考え方には昔から共感を覚えてきた。彼自身の本を読んだのは初めてだったが、基本的にはそれを再確認するための読書であり、さくさく読み進めることができた。

書かれている内容に沿って考えを巡らす中で今回印象に残ったのは「ライフスタイルの提案」という概念だった。このこと自体は珍しい概念ではないし、例えばよくビジネス書などで言われる、「商品を売るにはユーザーの体験を提案しなけばならない」というようなことと基本的には同義だと思う。今回それが印象に残ったのは、おそらくTSUTAYAという具体例がもたらす説得力と、それが単なる商品の付加価値ではなく商品 (増田氏にとっての企画) そのものであるからだと思った。

クラブの現場にいて強く思うのは、単なる音楽的なジャンル (例えば特徴的なリズムや音色) に留まることなく成立しているムーブメントの力は非常に強力である、ということだ。自分はこれを日本におけるJukeシーンの盛り上がりを見ていて強く感じた。

Jukeは高速で繰り出されるキック音と、低音が強調されたベース、そしてこれらの上で華麗に跳ね回る上物が合わさって構成されるダンスミュージックの一種である。そして、Jukeシーンを特徴付けているのはこの音楽に合わせて高速で足をステップさせるフットワークというダンスである。

ダンスミュージックに合わせてダンスするのは当然のことであるが、ジュークとフットワークは不可分なもので、例えばテクノミュージックに合わせて体を揺らすというようなものとは全く異なる。

これは多くのDJやパーティオーガナイザーが気付いていないか、気付いていないふりをしているか、気付いていながらも抜本的な対策を打ち出せていないことだけど、世の中に好きな、いい音楽を聴くためだけにクラブに来ている人は本当に少ない。クラブで飲むことが一般的でない日本においては最初のきっかけはおそらく音楽、またはナンパなどだと思うが (そもそもだから人口がなかなか増えないのだと思う) 、そこから根付いてクラブ通いを続ける人はそこにある人や特殊な飲み方、そして雰囲気など様々な要素を音楽に加えて得られる場所としてクラブに来ているもだと思う。そして、音楽と不可分であるダンスが成立する、ここにダンスが加わる。こうした要素が一つ増えることはそれが他のシーンにはないものだからこそ際立って結果が見える。思えば、ヒップホップも始めから「ラップ・ダンス・グラフィティ」をその3大要素として成立している。

これは単に「音楽とダンス合わせてプロデュースすれば最強っしょ」といいたい訳ではない。音楽それ自体がかっこいいかどうか、ということは大前提として、それをライフスタイルとしてどう提案していくかということをもっと真剣に考えていかなければならないのだと思う。

知的資本論 すべての企業がデザイナー集団になる未来

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